博物館探訪-印刷博物館
学生時代に一度訪れた事があるような気もする印刷博物館。
おそらく凸版印刷が出資している博物館で、その名のとおり印刷に関わるものが展示されています。
そう言えば暫くこの業界の事を忘れていたし、ちょっと初心に帰ってみちゃう?と、一路飯田橋へ向かいました。
駅を出て歩道橋をのぼると、目の前に『印刷博物館こちら』の大看板が!
博物館迄の道なりにもわりと頻繁に案内板が出ているので、迷いようがありません。
方向音痴の私でも一発で辿り着けました!(笑
さすがは天下の凸版印刷、この辺りに使える経費も潤沢と見た
建物は2階がカフェで、常設展は地下1階、1階にミュージアムショップとイベント用のギャラリーがあり、この日は『印刷書体のできるまで』という企画展をやっていました。
2014年に発表された新書体「凸版文久体」を例に、新しい書体の企画から完成までの行程を紹介しているもよう。
凸版文久体はディスプレイ上で読みやすい事を最優先課題として創られた書体だそうで、縦書きよりも横書きの時に美しく見えるよう工夫されているのだとか。
縦棒の角度や濁点の大きさなど、素人には違いが判らないような細部にまでこだわって創られていった事がよく判る展示になっていました。
制作時に担当者がデザイナーへ送ったメール文も展示されているのですが、その内容も熱い!
「現状、文字が止まって見えるから、もっとスピード感が欲しい」とか、「でも見出し用ほどは暴れない」とか、なにやら抽象的なオーダーがA4用紙2枚分くらいにわたって書かれていたりするわけですが。
これに応えるデザイナーさん凄いな!(^^;)
かつて欧文書体のデザインをした事のある友人が「アルファベット26字分のデザインを創らなきゃならなくて、途中で泣いた」と言っていたのを思い出しました
日本語はその上に漢字も創らなきゃなので、大変さは欧文の比ではないですね
そんな職人達(?)の新書体にかける情熱が満載になった展示で、大変興味深かったです。
こちらは6/18(日)まで無料で公開されているそうですよ!
常設展では、百万塔陀羅尼から始まり、エレクトロニクスを駆使して制作されたマイクロブック迄、古今東西の印刷物がテーマごとに展示されています。
印刷物の展示と聞くとテキストばかりというイメージを持ちますが、ここは文字による解説ボードはほぼ皆無。
代わりに用意されているのが、タッチパネル式の映像資料です。
最近は解説に映像を利用する博物館が増えていますが、私は良し悪しかなと感じています。
確かに映像は興味を惹きやすいし、理解を助ける上でも強力だと思いますが、文字ボードを読むのに比べて時間がかかるんですよね(^^;)
……と思ったら、ここのはディスプレイに触れると再生バーが出現し、自分で早送りができる仕様になっていました。
ナレーションも字幕になっているし。
字幕表示が再生バーの下なので、自分の指で中央部分が読みづらいのは難ですが、手動早送りで時間短縮できるのは大変便利
また、じっくり映像を観たいひとのために、机の下に椅子が隠してあるのも親切です。
ただ、ディスプレイが展示ケースと地続きになった机に埋め込まれているので、誰かが座って映像を観ていると、他の見学者は展示物自体も観にくくなってしまうのが難点かな。
私もそれで飛ばした展示物がいくつかありました。
すいている時はなんとか対応できても、混雑時にはあまり効率がよくないかも。
あと、個人的に……こうも徹底的に文字解説を排除されると、映像文化に文字が敗北したような悔しさを若干。。。
もちろん映像の中にも字幕が多用されているので、単に媒体の違いだけなんですが(^^;)
そういう意味では、印刷博物館と名乗りつつ印刷術に固執するわけでなく、飽くまで情報伝達法と捉えた上で、より広く深い伝達方法を模索し発明したひとびとを讃え、みずからもそれを追求し続けるというのが、この博物館のスタンスなのかもしれません。
実は常設展示室の外にVRシアターというのがあるのですが、これなどはまさにそうした理念を表しているかも。
湾曲したスクリーンに投影されたCGの大仏が、もしや今流行りのドローン撮影か!?と勘違いするほどリアル。
また3Dばりに奥行きを感じられる映像創りになっていて、本当に面白かった!
時代時代で開発される新たな技術を拒むのではなく、それを活用して情報伝達の質を高めていく。
その努力を惜しむべきではないという館側の気概が感じられたような気もします。
(気のせいかもしれません(笑)
ともかく迫力の映像は、まるで自分がその中に入り込んでしまったかのように思えるほどの臨場感でした!
映像に載せるナレーションが、係のお姉さんによるナマ語りなのは謎ですが
まあこれも館側のこだわりなのかもしれませんね(^^)
こちらは毎日オープンしているわけではないようなので、行かれる際には上映スケジュールをご確認ください。
そんなこんなでテンションになってしまい、うっかり活版印刷体験なんてものまでしてきちゃいました
展示室の奥に印刷工房があって、一筆箋に文字を印刷できるワークショップになっています。
自分で活字を拾うところから始めるので、それなりに時間が必要ですが、大変楽しかったですよ!
↑活字を組み込んで、高さを合わせるために金槌で軽く叩きます。
↑紙を挟んでガシャコンすると、印字される!
↓こんなのできた。
工房にはレトロな印刷機も並べてあって、見るだけでも楽しいです(^^)
ちなみに、工房は先着順の定員制なのですが、展示室にも多色刷りを体験できるコーナーがありますので、もし時間のない場合にはそちらだけでも試してみてください。
今回は展示品についてはまったく紹介できませんでしたが、貴重な古文書や版、印刷機なども展示されていて、歴史好きな方でも楽しめるかと思います。
正直1日では堪能しきれないっ
混んじゃうと嫌なのであまり教えたくないですが(笑)毎年5/5と11/3は入館無料だそうです。
ご興味を持たれた方は、ぜひ一度足をお運びになってみてはいかがでしょうか?(^^)
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